障害者(児)歯科保険研修会
本当の現場の声を、行政は真摯に聞け!
土曜日の夕方から、青森県歯科医師会が県の事業要請の一環として、かねてより準備を進めていた障害者(児)歯科保険研修会が開かれました。第1回の今回が八戸スタートとなり、八戸支部の私達地域医療委員会は講師選定から準備を続けていました。ワシが選んだ今回の講師はズバリ米沢先生(白銀台開業)。10年以上前から積極的に障害者治療に取り組んでこられた素晴らしい先生です。始まり際のパソコンのトラブルがあったものの、ギリギリ間に合い、素晴らしい現場の生の声を聞かせて頂き感銘いたしました。(以下、今回の取り組みとお話は知的障害が中心です)
歯科のHPをあちこちネットサーフィンすると、小奇麗なこじゃれたうたい文句と生活感の無いバーチャルな治療現場を想像させる文言や写真が目立つようになりました。決して否定はしませんし、それが歯科の一つの方向性であり国民もまたそういうものを望んでいるからこその物である事は確かです。しかし、今回の講演の中身はそういう現場とは180度反対側の、障害を取りまく社会の匂い、朝から晩までの現場の匂い、社会保障と貧困の狭間、医師としての良心とそれをうまく利用する行政、保険行政の連携の不備、そして改定するたび増加する診療報酬の不備がもたらす想像を絶する歯科サイドの経営難等々、生々しい現場報告の上に立つ苦悩です。しかし、理解されるごとに誇りを持てる歯科医師としての障害者への歯科的取り組みや、何よりも米沢先生の低い目線が障害者と歯科医師と一直線に並んでいる素晴らしさでしょうか。
ワシは積極的に障害を持っている方への治療やケアは取り組んでいません。頼まれれば居宅で訪問診療に伺う程度です。施設などへスタッフを数名連れて行く事とか、物理的に不可能な事はもちろんですが、実は講演を聞いて恥ずかしくなったのですが、心をそこまで優しくできない不可解な自分がそこにいる事がわかりました。それが医師としての良心の不備なのか、逃げ腰なのかはわかりません。が、「ワシには出来ないなぁ」という寂しい感想だけが残ります。さらに、障害者治療は想像を絶するエネルギーを必要とします。そのエネルギーの対価は全くと言っていいほどありません。ボランティアです。ワシのボランティア精神で三十余名のスタッフを食わせては行けません。毎週数時間それに時間を割く障害者治療は、明らかに医院として目に見えるほどの減収を余儀なくされる訳です。
あ〜、ワシってひきょうですねぇ〜。。。。。
それを、幾多の苦悩を抱え続けながらも黙々と障害者診療を続けている米ちゃん先生は「本当に偉い!!」と思います。
この国は、生き死にには大変なお金を使う事を許す国です、国民です。終末医療費は年間9000億円を超えます。ところが不自由なれどこれからどうやって生きていこうかというような、生きる質の向上のためにはほとんどお金は使われません。歯科という科は、それぞれの人の質の向上が目的の医療です。生き死にの医療にお金がかかりすぎているため、政府は命題として医療費削減を行ないます。しかしそれと同時に、歯科のような医療費全体の9%弱しかない、質を向上させる医療も同じように削減され、一番底辺の障害を持つ人、家庭、環境にまともにしわ寄せが来る大変な国なんです。霞が関のお偉いさんたちは、知的障害者相手に身を粉にしてブラッシング指導する衛生士の2重手袋の苦悩など、見た事も聞いた事も考えた事も無いでしょうから、机の上で数字をいじり、「う〜ん、歯科の障害者治療なんてこんなにいらないんじゃないか?」なんて、コーヒー飲みながら考えているんでしょうね。。
そんな矛盾点をさらけだして、歯に衣着せぬ講演は皆さんの心に響いたと思います。講演後の懇親会も集まった皆さんそんな激論でものすご〜く遅くの朝近くまで・・・・飯をクイクイお酒もクイクイ、、お疲れさまでした。
インタネ上のいろいろな掲示板やBBSでも「歯科」と検索するといやな話ばかりヒットします。ずるくて小金持ちで冷たくて、、、そんな評価ばかりの歯科ですが、これほど暖い歯科医師も大勢いるんですよ。
Posted: 日 - 2月 4, 2007 at 06:53 午後