産科医の廃業


苦悩の産科医を誰が救えるのか

数日前の地方版の新聞に、ある寂しい記事が載っていました。出産直前の妊婦に対して産科医が准看護師に内診をさせて、医師法違反に問われた案件で不起訴処分、つまり起訴するに値する十分な事項が無いと言うことで、産科医に責任は問わないと言う記事でした。不幸にも現場の嬰児は死亡。母親の警察への届出内容は准看護師が内診など医師が行なうべき仕事をしていたと言う事。そして医師当人への母親からの手紙「私は一生あなたを恨みます」。この手紙が元で、この医師は廃業。「精神的に仕事を続ける事が出来ない」・・・・・がコメントです。

私は直接この医師を知っている訳ではありませんが、知り合いの医師から聞いた所によると非常に温厚で優しく、自分の事はおいといても患者さんに献身的に尽くす素晴らしい方だと言う事です。なるほど、気に病み廃業するも解らなくはないですが、いいのでしょうかこれで本当に。。。

どんな厳しい状況でも、あたり前に産む事が至上命題のようになってどれぐらいたつのでしょう。犬も猫も人も自然分娩があたり前の時代、しかもそれはそんなに過去の事ではないのですが、不幸にして命を落とした我が子に母は何を思ったのでしょう。あたり前に産めない事が事前に解るようになり、それをすくう為に産科は発展したのだと思います。そのおかげで、過去からは信じられないぐらいの命を救ってきたはずです。しかし今の個人主義の権利の主張は、自分の事をさておいてと言う基本的スタンスがありますから、母体の状況や環境はどうであれ、正常に生まれさせる事が出来ないのは医者の責任!という風潮です。100人中99人をすくえても1人すくえなければ、医師の責任が問われる時代です。ましてや、ただでさえ産科医が不足している状況から鑑みて、医師の指示のもとの准看護師の医療行為が違法行為となれば、世に医師はいなくなりますよ。
産科医の不足をもたらしたのは、あくまでも我々国民の責任で産科医に責任はありません。ましてや「一生恨む」などと、子を無くした親の言うことですか。私の友人の市内の産科医も皆さん分娩はやめました。とてもいい先生ばかりです。こうして次々産科医がいなくなるんです。そして皆、自然分娩に戻るんです。今まで助ける事が出来なかった命を助ける事が出来るようになったのに、こう言う結果は残念でしかたがありません。

繰り返します。救えなかった命を救う為に産科医はいます。厳しそうな出産を安全にするために産科医はいます。あたり前に母となるヒトは産婆さんや近所のお助けオバサンの元でも元気に子を産めるのが普通なんです。普通に産めないかも知れない事を、産科医にせいにするのはおかしいですよ。。。だから、母になる心構えと毎日の暮らしがものをいうんです。

揚げ句に、出生率を社会のせいにするバカも休み休みにしてください。江戸の昔、明治の気概の頃、激動の大正昭和初期、今より社会が便利で優れていたんですか?違いますよね。いまの方が全てにおいてよっぽど恵まれているじゃないですか。理由は簡単。大人が自分の事ばかり考えているから、将来の日本や社会の事より自分の事が大切で子供より自分がいとおしいから、子供が減るんです。自分は水を飲んででも子供に飯を食わせようと言う思いがないんでしょ。仕事をしながら預ける場所がとか言うけど、違うでしょホントは。。。仕事をしてる自分がかわいいんでしょ。・・・あ、母だけじゃなくもちろんオヤジも同罪。

Posted: 木 - 5月 17, 2007 at 09:47 午後        




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