欧州歯科事情とウチ


マルメ大セミナー受講のマッチャンいわく、、、、本当はいつもウチでやっている事ばかりだったのでそんなにすごいとは思わなかった・・・

ウチの衛生士がこのあいだスウェーデンのマルメ大学のセミナー受講してきた話しはしましたが、色々聞いているうちに彼女の彼女なりの感想とは・・・・特段目新しい事はなく、当院でいつも言われている事、やっている事がほとんどで、その基礎学習の復習だッた・・・・と言う事らしいです。周りは非常に若い衛生士ばかりで、ひとまわり違うマッチャンはちょっと戸惑ったよう。しかしですよ、いつもウチであたり前にしている事がこれほど欧州スタンダードな事だとは忘れていましたね。しかも首都圏在住の衛生士達が、これだとばかりに勉強に行くと言うのが泣かせます。現在勤務の歯科医院はどういう考えなんですかね。加えて皆自腹だとか(笑)。やはり自院の日常臨床指針に間違えはなかったと確信しています。



欧州は今、EUと伴に国境を越えて歯科医師が自由に行き来できる環境をととのえつつあります。しかし、教育内容には大きな違いがある事は事実であり、臨床実習の多い国、ほとんどない国が混在して歯科の人的移動を可能にするのには強力なイニシャチブが取れる国が必要です。スウェーデンの様に衛生教育がかなり発達していると、歯科疾患受診者は極めて少なく、歯学教育には支障を来します。一般医学教育と密接な国もあればそうでない国もあります。教育に支障を来すなら、歯学入学定員を大きく削減すればいいのですが、スウェーデンなど殆どの歯科医師が国家公務員ならまだしも、そうでない国では教育機関運営すらままならなくなるでしょう。

ここで、今回のマッチャン出張先だったマルメ大学の教育現場はどうなのか・・・
マルメ大学はPBL(プロブレムorプロジェト・ベースド・ラーニング)教育を本格的に導入したことで世界的に有名な大学です。具体的な事例を問題として取り上げ学生たちの自主的な努力によって学習を進めていきます。例えば、少年がアイスホッケーの練習中に歯を強打された。この患者をどのように治療していけばいいのか? 学生は、歯や顎骨、そしてその成長という問題、修復方法その歯科材料は何を選ぶべきかという問題を学生たち自身で解決していきます。通常6人から7人の学生でグループを作り協力しながら、仮説をたて学習の到達点と決めます。それぞれの問題点を解決していきます。次の週にグループは学習成果を報告します。それぞれのグループは他のグループとは高度に独立して活動していきます。しかし、それぞれのグループはそのグループの活動を支援する指導教官をもっています。学生たちがすでに問題として取り上げてきたことについて、セミナーを行うこともあります。(つじ歯科クリニック・辻龍雄院長 著・「欧州の歯学教育システムについて」・・・より抜粋)

PBLは今や各方面で盛んに行なわれている教育方法です。日本の歯学教育の中にもどんどん取り入れて欲しいものです。良く考えてみると、ワシらが運営しているスタディグループ「HERZ会 」も、基本的にはPBLが中心でした。なぜなら、臨床経験の多い少ないが混在している勉強会において、一つの事を学習するためには大きな問題点・・基礎知識の差・・がクローズアップされるからです。これにより習熟の時間、理解度、応用、に大きな差が出てしまうのです。ですから、PBLはあたり前の事だったんですが、そういう事とは知らずに勉強会を運営していたんですな(笑)。すごい!(笑)

最近の歯科の傾向は、急激な患者減少に伴い、米国式経営コンサルタントの横行で、快適な環境とサービスばかりを重要視するあまり、本当に肝心な事を忘れている傾向がとても強いのが気掛かりです。忘れているもの・・それは「日本」です。。日本型の素晴らしい保険システムや医療技術は、欧州はもちろん、ましてや米国の高インフレ医療など、足下にも及ばないでしょう。そのシステムを十二分に発揮できるヒントが、逆に欧州の歯科事情の中に隠れていると考えています。


Posted: 日 - 11月 25, 2007 at 12:28 午後        




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