<アンテリア・ガイダンスの調節>
前歯部の大きな症例では、どうしてもテックを入れて帰すでしょうから、そのスタディーモデルが必要になります。そのスタディーモデルからアンテリアガイダンスをトランスファーするわけですが、口腔内で作ったテックは、かなり曖昧な物で、患者さんの顎位及び顎運動はは低い方へ低い方へと流れていきます。しかし、患者さんは顎位の低い高いは認識できても、下顎運動の方向までは、認識できないのが普通です。従って、出来たプロビジョナル・レストレーションも、だいぶ信頼性に欠けてしまいます。それを咬合器上で調整する事によって、その問題はだいぶ解消されます。
(これは有効顆路角よりもゆるいんじゃないだろうかと思われるような、前方にフレアーした補綴物を見かけることがありますが、そのような、テックが入った模型の場合は、この方法は適応にはなりませんので、あしからず・・・)
1)まずスタディーモデルを咬合器にマウントします。その際、それは作業用模型と同じ環境でマウントされることが、前提となります。その場合も有歯顎咬合堤は有効です。作業用模型をマウントした時に使用した有歯顎咬合堤でスタディーモデルをマウントします。
2)次に前方運動のチェックをします。その際、左右のベネット角をゼロに戻し、前方運動した際、まっすぐ前にしか行かないようにします。そうすると、患者さんの口腔内で調整したエラーが咬合器上で解ってきます。患者さんの下顎運動は低い方へ流れて、その角度で良しとしていますので、その低い方に合わせて調整します。つまり、全部の前歯が均等に当たるまで調整します。その結果、出来た前方運動のガイドを矢状切歯路傾斜度とします。カスタムインサイザル・テーブルを作製する場合でも、この作業は是非行って下さい。そうしないと、最終補綴物のアンテリアガイダンスはプロビジョナルのそれより、かなりきつめのものが出来る可能性があります。
前方運動時の矢状切歯路傾斜度の調整
3)次に側方切歯路の調整に入ります。その際、もし、チェックバイトを採ってきたならば、顆路をその値に戻します。もし、採って無ければ、平均値に戻します。
側方運動させてプロビジョナル・レストレーションで再現されている犬歯の位置までもってきて、側方切歯路角を調節します。
以上がプロビジョナル・レストレーションが入ったスタディモデルを用いたアンテリア・ガイダンスの調整方法です。