「臨床現場の声を代表して地域から発言」
鞍立常行 氏(新潟県小千谷市開業)

インタビュアー:奥村 勝
厚生労働省が医療制度改革を進めているが、歯科医師の立場が制度に十分理解・反映されていないという意見がよく聞かれる。日本歯科医師会には、問題解決に向けて、臨床現場・国民の目線での会務執行が望まれているが、十分に応えているとは言い難いのが現実である。そこで開業医として歯科診療をしながら、地元歯科医師会役員、教育委員長を努め、さらにまちづくりなどの地域活動にも尽力し、まさに八面六腑の活躍をしている、デンタルコメンテーターの鞍立常行氏(新潟県小千谷市開業)に、開業医としての視点から、歯科界の現状認識と課題、そして今後への期待と展望を語っていただいた。

組織の再構築が急務
 
歯科医院経営については、巌しい状況が歯科疾患実態調査の数字をみても、わかります。実際、開業医の立場から現在の状況をどのように認識されていますか。

鞍立:厳しい状況が事実だと思います。昨年4月の診療報酬マイナス改定、10月の老人患者の定率自己負担導入、今年4月からの社保自已負担3割実施などを考えれば当然と言えば当然なことことで,致命的なことになるかもしれません。そこで、東京などに代表される都市部では、保険診療の滅を補うべき、無理に自由診療に走る傾向が見られます。私も都市部で開業していれば、生きていくために同じかもしれません。そこで患者さんとトラブルは生じ、その内容が最近では「週刊文春」にあったように、マスコミのキャンペーンとして扱われるということになるのです。結果的に歯科業界のイメージをダウンさせているのです。
 医療費自体のパイははぼ限られているのに、歯科医師は相も変わらず毎年2,800名前後誕生しています。一方、需要増加のために審美歯科のホワイトニング、スポーツ歯科のマウスガードなどの取り組みをしており、それぞれの重要性や意味は認めるのですが、残念ながら現状の打開策の切り札にはなっていません。
 歯科界が抱えた問題を、一つひとつ絡んだ糸をほぐす中で、これからの歯科医療を国民・患者さん提示していく必要があります。その為に組織あるいは業界全体として再構築する時期にきています。

会員の有利性の確立

ご指摘のように、歯科医師会だけでなくどの業界も組織の問題点が露呈しております。結果・成果はともかく、会員が納得・理解するような対応がされていないのが、その一番の理由ではないかと思います。従釆の組織の在り方の何が問題なのか、その点はいかがですか。

鞍立:一般の市民の人からみたら、歯科医師会の非会員がいることも知らないと思います。弁護士会のように弁護士=弁護士会会員のように、歯科医師=歯科医師集会会員にはなっていません。この点については大きな課題だと捉えています。
 新潟県における会員・非会員の問題について紹介させていただきます。非会員については二つのタイブがあります。一つは、歯科医師会に入会しなくて、節約の意味として会費を払わない形です。経費削減を理由とする非会員です。もう一つは、歯科医院のチェーン展開をしていることで、歯科医師会から締め付けを受けを回避するために、独立独歩で展開することを理由としたものになります。
 それぞれ理由があります。しかし、こうした歯科を取り巻く環境は厳しくなる中で、何を最初にしなくてはいけないのか、考える必要があります。歯科医師会・歯料医師はもちろん、歯科技工士、歯科衛生士、企業などを含め一つにまとまらないと再構築は無理ではないかと見ています。個人でバラバラにしていては、その歯科医師・歯科医院、その地区の患者さんは良いのかもLれませんが、それだけで良いのだろうか。国民の目を歯科に向けさせるには、業界全体が−体になり向上するような方策をしなくては、ダメではないかと思います。
 そして、その軸になるのが歯科医師会だと思っています。敢えて言えば、それに代わる組織・団体があれば、歯科医師会でもなくても良いかもしれません。しかし、一から組織を構築し、患者・国民からも認めていただける組織・団体は、すぐにできるわけがありません。各地域で努力されている開業・歯科医師の明日にでもしてほしいことは、現在の患者・国民からも一定の理解を得ている歯科医師会を、地域で活動している開業医の希望を少しでも引き出せるように再構築することが、重要かつ必要なことです。これがいわゆる改革のスタートになります。
 歯科医師会というより現在の行政組織も含めて指摘できることですが、役職に就いた人は、可能な範囲のレベルの中で紋切り型の年間行事計画をし、それを実行して、それで終わらせ、それで評価されていまLた。確かに中には結果的に、有用な施策もあります。しかし全体的には、単発で連続性がないのも事実です。
 私自身が責任者とLて「小千谷まちづくり」を計画・実行した経験から指摘できることです。一つの目標を決めた中で、絶えず施策を積み重ねるという作業を、小さな施策でも必ず念頭に置いて、着実に実施していく必要があるのです。それによって、一人ひとりの会員からの信頼を得る、非会員の人にも、歯斜医師会に入会した方が有利だな、と思わせることを日本歯科医師会、各都道府県歯会、各郡歯会レベルで、それぞれの立場を大切にして実行していくことしかないと思います。65、000人の全員の先生がそれぞれのポジションで努力していただくことしかないですね。