有歯顎咬合堤の実際
前記のように総義歯は咬合床を作って咬合器にマウントします。それを有歯顎にも応用してみましょう。このページはテキストだけのページで、図をクリックすれば何枚かまとめた図と簡単な説明が見られます。
その術式を説明します。
1. 通法通りスナップ印象を採得し、作業用模型に正中線を引きます。(図1)
2. 作製しておいた有歯顎咬合堤に診断用模型の上顎咬頭頂を印記します。(図2)
3. 上顎診断用模型の咬頭頂が印記された有歯顎咬合堤を口腔内に適合させます。
これは、フェイスボウのバイトフォークの時と同様に口腔内には必ず適合するはずです。
(印象がそして模型が変形していなければですが・・・)
4. 口腔内に適合させた有歯顎咬合堤の前面が正中矢状と直交するように(図3)
そして、下面と患者のカンペル平面とが平行になるように調整します。(図4)
5. 患者の平均的顆頭点(ベイロンズ・ポイントを採用)と上顎中切歯近心切縁偶角との距離をノギスで実測します。(図5)
6. 有歯顎咬合堤の下面と上顎中切歯切縁までの距離を測定します。(図6)
ここからが咬合器付着に入ります。この際、咬合器は何でもいいのですが患者のカンペル平面をトランスファーするわけですから、カンペル平面基準の咬合器の方がより理解しやすいです。フランクフルト平面基準の咬合器にこの方法でマウントする場合は以下に書かれているテンプレートをフランクフルト平面とカンペル平面とのなす平均的角度の約12度傾けてマウントする必要があります。(図7)
7. 上下する機構の着いたテンプレートを咬合器にセットし、6で測定した有歯顎咬合堤から上顎中切歯切縁までの距離の分だけテンプレートを下に下げた状態(図8)で、有歯顎咬合堤をテンプレート上に置き、上顎模型を適合させます。
その際、模型の正中と、テンプレートの正中を合わせて置いて下さい。これによって上顎中切歯切縁が咬合器の真ん中に来ることになります。
作業するにおいて、やはり模型が咬合器の真ん中に着いた方が非常に作業しやすいです。
上下するテンプレートを持っていない方は、これは是非買いましょう。
一つ買えばいいんです。買うと自分の物になります。
8. 咬合器の顆頭球中央から25mm外側をマーク(図9)します。そこから6で測定した距離の所に上顎中切歯近心切縁偶角をもってきます。(図10)
9. 付着します。(図11)
以上が、有歯顎咬合堤を用いた咬合器付着の実際です。これによって患者の正中は咬合器の正中に、カンペル平面は咬合器の上弓と平行に(つまり咬合器の真ん中に)、関節頭からのディスタンスも再現できます。
つまり、上顎の空間的位置が咬合器に再現出来たことになり、歯科医師が口腔内を真正面から見たときと技工士が咬合器を真正面から見たときが同じ環境になります。
では次に有歯顎咬合堤を用いた臨床応用を紹介します。
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